プロジェクト型ビジネスの課題と収支管理

このページでは、プロジェクト型ビジネスの内容や特徴、プロジェクトごとの収支管理を行っていく上で注意すべきポイントなどをまとめて解説しています。プロジェクト型ビジネスにおけるプランニングを進めていく上で参考にしてください。

そもそも「プロジェクト型ビジネス」とは

プロジェクト型ビジネスとは、企業としてサービス提供や製造、販売といった事業を管理するのでなく、クライアントや企画ごとに案件を単位化して、それぞれのプロジェクトに応じた収支管理などを行っていくビジネススタイルでありマネジメント方式です。

プロジェクト型ビジネスを実践することで、どのようなプロジェクトであれば利益を追求することができて、どのようなプロジェクトであれば思ったような事業成果を上げられなかったのかなど、個々のプロジェクトを比較検討したり、各プロジェクトの状況を細分化して正確な情報を収集したりできるようになります。

プロジェクト型ビジネスは主として広告業界やコンサルティング業界、イベント業界などで活用されているスタイルです。

プロジェクト型ビジネスにおける原価

プロジェクトごとに収支管理を行うプロジェクト型ビジネスでは、それぞれのプロジェクトにおける原価を把握しておかなければなりません。

プロジェクト型ビジネスにおける原価には大きく分けて「直接費」と「間接費」があり、例えば前者は労務費や外注費、経費などが該当し、後者は事務所の家賃や光熱費、その他の人員の人件費といったコストが該当します。

直接費

プロジェクト型ビジネスにおける直接費とは、そのプロジェクトの実施に直接かかったコストであり、スタッフの給与などの労務費や外注費、その他の必要経費などが挙げられます。

ただし、あくまでもプロジェクトごとに独立している費用であり、事務所全体で使うものの購入費などは含まれていません。

労務費（人件費）

プロジェクトへ直接的に関与しているスタッフの給与や、プロジェクトの成果に応じて支払われる追加報酬といった人件費が労務費です。あくまでもプロジェクトの実施に直接関係していることが重要であり、他のプロジェクトもまとめて管理しているようなスタッフや担当者の人件費については直接費の労務費として考えません。

外注費

必要なスキルを有する人材が自社にいない場合や、必要な人員の数を手配できないような場合、専門会社へ業務の一部をアウトソーシングすることもあります。そのような外部委託を行うために支払う費用が外注費です。

なお、外注費には外部スタッフへ支払う人件費や、何かしらのアイテムや設備などを外注業者に制作してもらうための制作費など、用途に応じて様々なものが存在しています。

諸経費

例えばスタッフの交通費や打合せを行った際のお弁当代などの会議費、プロジェクトを行う上で使用する事務用品の購入費など、労務費や外注費に含まれない直接費が諸経費として含まれます。

なお、ここでいう諸経費はあくまでもプロジェクトの企画や実施、運用へ直接的に関わっている費用が対象となっており、会社全体の業務運営にかかる費用などは同様に経費であっても直接費には含まれないことに注意してください。そういった費用はまとめて間接費として扱われます。

間接費

プロジェクト型ビジネスにおける間接費とは、プロジェクトを企画したり運営したりするために必要な費用でありながら、特定のプロジェクトだけに関与しているわけではない費用の総称です。

例えば会社の経理担当者へプロジェクトの出張費の精算などを依頼する場合、出張費そのものは直接費における諸経費ですが、経理担当者の給与は間接費となります。

間接労務費

従業員へ支払う労務費（人件費）の中でも、プロジェクトに直接は関与していない人員に対して支払う費用です。基本的には会社全体の業務を担当する従業員などへ支払われる給与であり、例えば経理担当者や総務担当者、または社内食堂の調理担当者などへの給与が間接労務費として計上されます。なお、条件によって間接労務費には外注費用も含まれます。

共通費

共通費とは労務費の他に各プロジェクトの運営や日常業務で共通して発生する費用であり、例えば事務所の家賃や水道代、光熱費、OA機器のリース代といった様々な費用が該当するでしょう。

プロジェクト型ビジネスにおける収支管理の課題

管理が煩雑になりがち

例えば一般的な飲食店の場合、それぞれのメニューごとに細かく原価や販売数量などを計算し、それぞれのメニューごとに売上を管理して精査した後、改めて全体を比較検討するといった作業は取らないでしょう。しかしプロジェクト型ビジネスでは個々のプロジェクトに合わせて収支管理を行うため、必然的に複数のプロジェクトが同時進行すれば原価の計算や比較検討といった管理作業がどんどん煩雑化していきます。

また、プロジェクトの数が増えるに従って業務負担が増大していくため、結果的にそれぞれの管理が甘くなって正確なデータ分析やマネジメントが行えないといったリスクもむしできません。

原価計算が難しい

プロジェクト型ビジネスでは、案件ごとに複数の原価を管理しなければならず、また一部のプロジェクトへ同時に関与しているスタッフが存在するなど、全ての直接費と間接費を明確に区別しにくいような状況も考えられます。

そのため、プロジェクトが進行している時は意識していなかったコストが改めて間接費として計上され、結果的に赤字として算定されてしまうといったこともありえます。

プロジェクト型ビジネスにおいて原価計算の難しさは重要なテーマであり、さらに難しい計算をどれだけ効率化できるかといった点も大切です。

プロジェクトごとに収支管理を行う重要性

プロジェクトごとの利益を把握できる

プロジェクトごとに収支管理を行うことで、それぞれのプロジェクトを黒字・赤字できちんと区別し比較することができます。また、どのプロジェクトでどれだけの利益や損失が生じたのか具体的に把握できる上、例えばどのようなコストを削減すれば一層に費用対効果を向上させられるのかといったプランを検討する上でも役立ちます。

改善の必要があるプロジェクトを見つけられる

赤字のプロジェクトや、黒字ではあるものの特定の費用がかかり過ぎているプロジェクトなど、今後に改善の余地や必要性があるプロジェクトについてきちんと把握できることもポイントです。

また収支としては成功していても、プロジェクトにおいて潜在的に含まれるリスクを想定できることも肝要です。

今後の見積もり算出をより正確にできる

プロジェクト型ビジネスを導入することで、今後に類似の依頼やプロジェクトがあった際の費用対効果のシミュレーションや、見積作成といった業務を速やかに実行しやすくなります。

プロジェクト型ビジネスの収支管理には「プロジェクト収支管理ツール」の活用がおすすめ

プロジェクト型ビジネスでは複数の原価や項目についてリアルタイムで管理しなければならない上、自社で取り扱っているプロジェクトの数や規模が増えるほどに業務が煩雑化していきます。そのため、実際にプロジェクト型ビジネスを導入して適切な収支管理体制を構築するには、例えば「プロジェクト収支管理ツール」のような専門システムや専用ソフトウェアなどを活用して、業務全体の効率化とリスク軽減を考えていくことが重要です。

まとめ

プロジェクト型ビジネスでは、原価に直接費と間接費といった分類があるだけでなく、労務費や諸経費など独立させて考えることが難しい費用について考えなければならないことも問題。そのためプロジェクト型ビジネスを適正にマネジメントしようとすれば、プロジェクト収支管理ツールのような専用システムを利用して、少しでも業務の効率性や正確性を高めることが大切です。

ただし、プロジェクト収支管理ツールにも複数の種類があるため、まずは自社のニーズや条件に応じた製品を比較検討するようにしてください。